天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

人物を詠む

砂子屋書房刊

 詩歌に人物を詠むことは、わが国においては、古事記・日本書記といった古代と近代以降において顕著である。作者にとっては、直接に面識があったという場合は少なく、伝説や記録に基づいて詠むことが多い。政治家、軍人、小説家、音楽家、芸人、科学者、詩人 など対象者は広範囲に及ぶ。自然に対すると同様に人物に対しても感動することがあるので、詩歌の対象になるのは当然と言える。
近現代の短歌に人物を詠んだ歌人は多い。この観点からまとめた本に、小池光『うたの人物記』(角川学芸出版)があり、すでに昨年このブログで紹介した。また、「伝説的人物を詠む難しさ」という記事を、2006年3月16日に書いているので、併せて参照されたい。
 わが親しむ歌人斎藤茂吉塚本邦雄、小池光、藤原龍一郎の4名について、人名を最も多く詠んだ歌集とその割合を次にあげておく。

   斎藤茂吉: 『遠遊』      10.8%
   塚本邦雄: 『詩魂玲瓏』    17.8%
   小池 光: 『山鳩集』     15.2%
  藤原龍一郎: 『東京哀傷歌』   29.9%(右上画像の本に掲載)

茂吉は留学中に西洋人を多く詠んでいる。ただ圧倒的に多く西洋人を詠んだのは、塚本であった。また、時代の文芸・映画・芸能・プロレスなどの分野の人名を取りあげたのが、藤原であった。小池の場合は、あまり片寄らずに各種の分野の人名を詠んでいる。
私自身の場合は、西行藤原定家イチロー などについて、集中的に歌を詠んだ。このブログにおいて今後折に触れて、人物を詠んだ歌を取りあげてゆきたい。