天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

キリスト(1)

ダヴィンチの「最後の晩餐」から

 厳密に数を比較したわけでないが、短歌で最も良く詠まれた人名の一つであろう。彼の生涯を事実に基づく歴史学の上から明らかにすることは難しいようであるが、次のように推定されている。
 ヘロデ大王の晩年(BC4年没)にガリラヤのナザレに生まれ、AD28年ころバプテスマのヨハネに洗礼を受けて、その運動に参加、のち独立してガリラヤを中心に宣教し、AD30年頃エルサレムで捕縛・処刑された。


  ざはめきの中にキリストを見失ひわたくしの死は既にはじまる
                     中城ふみ子
  昏きルオー展にて人に見られゐむ瞼うるみし若きキリスト
                     塚本邦雄
  キリストは青の夜の人 種を遺さざる青の変化者
                     葛原妙子
  ありがてぬ甘さもて恋ふキリストは十字架にして酢を含みたり
                     葛原妙子
  凭りかかるキリストをみき青ざめて苦しきときに樹によりたまふ
                     葛原妙子
  かがまりて悲しさ土にかきたまふキリストの指大きかりしか
                     福田栄一