斎藤茂吉を詠む(1)
歌人を詠んだ短歌は多いが、最も多く詠まれた歌人といえば、斎藤茂吉であろう。次いで正岡子規、西行といった順になるか。茂吉については、その個性、生立ち、職業、独逸留学、万葉集・柿本人麻呂・源実朝 等に関する研究、戦争に対する態度、食べ物の好み、女性関係、文化勲章受賞 など話題が豊富なところが、歌にもしたくなるのであろう。
黙し立つ茂吉先生におづおづと吾の近寄る明方の夢
結城哀草果
茂吉先生ピカソを蔑したまはざりき後の世のため言ひ
ておくなり 柴生田稔
紙帳の中一字に苦しむ茂吉がゐると思ふ時代も永久に
過ぎたる 河野愛子
うつつには見(まみ)えざりしがつきかげにうつうつとして
真紅の茂吉 塚本邦雄
書いてゐるときいちばん心落ち著(つ)くと斎藤茂吉いへり
わが子に 小池 光
懐中にサックを携帯せし茂吉ふさ子を隠しきりし茂吉よ
阿木津英