天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

斎藤茂吉を詠む(3)

青山霊園にて

 茂吉の短歌や足跡を研究した歌人は多い。塚本邦雄『茂吉秀歌』と小池光『茂吉を読む』は、私が熟読した本であった。茂吉が滞在した場所は、国内外に多い。国内の場合、歌碑が建てられたりしているのでわかりやすい。私は山形県上山市の茂吉記念館、箱根強羅、青山霊園の茂吉の墓 などを訪ねたことがある。蔵王山頂には行きそびれて未練がある。


  歌会の後斎藤茂吉先き立ちき皆溌剌として溝にほふ街に
                    吉田正俊
  まのあたり茂吉文明見しゆゑに悔いなきいのちと思ひ
  つつ来し              宮地伸一


  ただ独り 異教の街にまぎれ住み 耐へがたかりし 
  茂吉おもほゆ            岡野弘彦


  会いしことなきに茂吉がありありと目に浮かびくる
  浴後の姿              大島史洋


  茂吉の歌読みさして生徒はこの<黒き葡萄>は戦場の
  死体かと言ふ            大森益雄


  「かも」といふところを顎をひきしめて「かもオつ」と
  言へり茂吉の朗読          澤村斉美