天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

焼酎(続)

わが食卓より

 焼酎の歌は、2010年1月6日に取り上げたが、以下にはそれらと重複しない作品をあげる。戦後しばらくは、焼酎といえば安価低級な酒と一般に考えられていたが、高級な品質の旨いものが出ており、あなどりがたい。「焼酎」という表記と音韻がイメージを悪くしているのだ。また次にあげるいくつかの作品のように、焼酎が詠まれた場面が俗なのである。


  焼酎の酔いのさめつつ見ておれば障子の桟がたそがれてゆく
                     山崎方代
  焼酎にレモンしぼりて春寒の残る時間をわが惜しみゐる
                     内田紀満
  砂糖入りの父の焼酎を戸棚より盗みて飲みし母も忘れき
                     竹山 広
  球磨焼酎<武者返し>の五勺を湯で割りて飲めば偲ばゆ父の
  サーベル               楠田立身


  近う参れ近う近うと呼ぶゆゑに夜ごと<伊佐美>の瓶に近づく
                     高野公彦
  焼酎の仕込み着手の神事にて笛がひよろりと和の音奏づ
                     岩井謙一
  焼酎を酌むほかは寄らざる浮浪者ら地下道にかたみの
  エリア保ちて             鈴木諄三


ちなみにわが好みは、一番が芋焼酎であり、二番が沖縄の泡盛である。