天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

紅葉狩―大雄山―

大雄山にて

 神奈川県南足柄市にある大雄山最乗寺の草創は、応永元年(1394年)。福井の永平寺、東京鶴見の総持寺に次ぐ格式のある曹洞宗の寺院である。創建に貢献した道了という僧が、寺の完成と同時に天狗になり山中に隠れたという伝説から、道了尊とも呼ばれる。
JR小田原駅から 伊豆箱根鉄道大雄山線大雄山駅から道了尊行きバスに乗った。以前は春、夏秋と三回くらいは訪れていたのだが、最近はとんと御無沙汰している。バスの終点から大杉木立の間を歩いて石段を登り奥の院まで行った。紅葉はすでに色褪せていたが、黄葉は最盛期であった。今日も法螺貝の鳴る音を数回聞いた。


     バス待てば高き梢に鵯の声
     電車待つ冬陽まぶしきベンチかな
     黄葉散る柱朱塗りの仁王門
     塗り剥げし仁王立ちたり山紅葉
     大杉の木立明らむ黄葉かな
     階段の落葉危ふし奥の院
     石階の手すりに縋るもみぢかな
     開山の坐禅石あり冬木立
     法螺貝や冬の木立に谺せる
     音たてて銀杏散るなり杉木立
     朱が濡れる黄葉下の和合下駄
     もみぢして烏天狗のあらはなる
     銀杏散つて吹き寄せらるる路傍かな


  開山の坐禅石とふ岩ありて袈裟の代りにもみぢ舞ひくる
  いつまでも朱塗剥げざる和合下駄大雄山に法螺貝は鳴る
  黄葉に大杉木立明らみて烏天狗は黒々と立つ
  廻廊を下駄鳴らしくる修行僧朝の勤行終へて清しき
  人類に一度きりなる彗星(アイソン)が尾を引きよぎる
  しののめの空