天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

 ベートーベン

NHK・BSテレビ画面から

 NHK・BS1のザ・プロファイラー「ベートーベン 成り上がりが届けた人類愛」を見た。今まで知らなかった多くのことを知って吃驚した。ゲストの内、ピアニストの仲道郁代さんの技量と見識にも感心した。


  Beethoven(ベエトウフエン)若かりしときの像の立つここの
  広場をいそぎてよぎる          斎藤茂吉


  ベートーヴェン嫌ひ昂じて傘置きの五番避け九番は「故障中」
                      塚本邦雄
  ベートーヴェンシューベルトらの墓碑のあいモーツァルト
  には葬るなにもなく           近藤芳美


  ベートーベンに聴き入る猿を見せられしゆふべ出でて食ふ
  激辛カレー               竹山 広


  純真な空の高さとベートウベン書きしこころに今宵ふれしか
                     大河原惇行


 斎藤茂吉の歌は、歌集『遠遊』にあるもの。ドイツ留学の際の事象を詠んだ。大正十一年一月、オーストリア・ウィーンに着いた時から同地を去る大正十二年七月までの期間である。茂吉が「後書」で述べているように、思い出として役立つ歌集である。つまり記録の性格が強い。短歌は記録であってはならない、という戒めが歌会や鑑賞の際に出て来るが、決してそんなことはない。先ずは本人にとって意味がある。読者にとっては、歌人のリアルな足跡を辿る場合に有難い。但し、個人に固有な記録であることがポイント。誰でもが知っているような事実の記録ではダメということ。