天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

新春の吾妻山

二宮町吾妻山にて

 例年のように新春の吾妻山に登った。ところどころの斜面の水仙の群落では、朝日に向って花が咲き誇っていた。山道の傍らにはアオキの朱実が目立つ。吾妻神社に裏手から近づくと鋭い声で笹子が鳴いた。頂上の菜の花畑は黄の一色。冠雪の富士山はこの日はあいにく雲のはざまに霞んではっきり見えなかった。菜の花と雪の富士のワンショットは、吾妻山の良く知られた風物詩である。


     大寒やビルの谷間を風疾る
     笹鳴きの吾妻神社に詣でけり
     とりが鳴く吾妻神社の笹子かな
     あたたかき「綾鷹」を飲む吾妻山


  石蕗の絮のこぼるる傍らに朝をかがやく水仙の花
  菜の花も水仙も咲く初春の吾妻山には笹鳴きの声
  とりが鳴く吾妻神社は無人なりわが一人来て鈴ふり鳴らす
  菜の花のかなたの空に初春の富士はかすめり雲のはざまに
  つぶの身をみな寄せ合ひて育ちたり朝日に光るアオキの朱実
  冠雪はわづかになりぬ大寒の朝をかがやく丹沢の嶺
  龍の吐く水のしぶきは地に落ちて氷と化せり大寒の朝
  新春の客ににぎはふ水族館指の合図にアシカが笑ふ