天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

松田山の河津桜と菜の花

松田山にて

 今年も例年どおり出かけた。小田急線で渋沢を通る時、春雪に輝く丹沢の山々が見えた。このあたりは信州の山麓の村に似たような情緒があり、住んでみたい気分になる。松田山の斜面にひろがる河津桜は、新松田駅に近づくと電車の中からも見えるので、乗客がざわめく。新松田駅から松田山までは、シャトルバスがでている。ただ、このバスに乗るのは長蛇の列ができていて、席をとるのは容易でない。よって例年、徒歩で往復している。ハーブガーデンにはこの時期、セージ以外の花は見かけない。


     丹沢に春の雪嶺青き空
     さばへなす騒ぎの電車さくら見ゆ
     星屑を地にばらまけりいぬふぐり
     花に酔ひ人混みに酔ふ斜面かな
     柚子しぼみ河津桜のさかりなる
     天井の高きにさがるつるし雛
     目白きて河津桜歓喜かな
     女生徒のスマホを覗く春日かな
     ミモザ咲く赤きポストの麺麭屋あり


  夜の雨やみて明けたり青空に雪の川なす丹沢の山
  小田急の電車の席がさんざめく丘になだるる河津桜
  菜の花と河津桜の競ひ咲く山の斜面に人つらなれり
  蜜吸ふを撮らむとカメラ構へたり河津桜を目白飛び交ふ
  春浅き段々畑のハーブ園セージひとつが空色に咲く
  小田急の電車の窓のまぼろしか戦闘機二機青空に浮く
  わが席の隣に座る女生徒はスマホ片手にわれを気にする