天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

花の宮ケ瀬

清川村宮ケ瀬にて

 短歌人・東京歌会に次の詠草を出した。


  葉桜になりつつあればそはそはと桜狩ゆく
  まだ見ぬ山へ


配布されたプリントの終りの方に載っていたので、みんな疲れていたか、さしたる批判は出なかった。ただ花鳥佰さんが結句「まだ見ぬ山へ」に惹かれると褒めてくださった。それが嬉しかったので、小田急線・本厚木駅からバスに乗って久しぶりに清川村の山奥の宮ケ瀬湖を訪ねた。湖畔の桜は少しちり始めていたが、十分に満開の様子を堪能できた。


     乗客の最後となりぬ桜狩
     宮ケ瀬の湖面をわたる花の風
     吊橋を渡れば揺るる桜かな
     さくら散る中を白蝶とびゆけり
     はなびらの散りてま青や宮ケ瀬湖
     宮ケ瀬の湖ま青なる桜かな
     望郷の碑を読む枝垂桜かな
     湖に村を沈めし桜かな
     山吹をゆらせるバスの路線かな
     風薫る若葉の山の観世音


     
  宮ケ瀬は清川村の奥にありバスの路線に花桃の見ゆ
  風薫る若葉の山のそこここに白々のこる山桜花
  吊橋をひとり渡ればかすかにも揺れて波立つ宮ケ瀬の湖
  湖に村を沈めて望郷の碑を建てにけり山奥の民
  望郷の碑文を読みて眺むれば湖畔のさくら美しかりき
  山下るバスの窓辺に移りゆく桜につつじ、木蓮の花