天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

生殖の池

藤沢新林公園にて

 藤沢の里山の新林公園を歩いた。幼い若葉のみどりが清々しい。古民家の周辺にはおおきめの溜池とちいさめの池がある。溜池の方は人の出入りができないように柵が立てられている。覗き穴があるのでそこから見ても生きものの姿はめったに見えない。たまに亀が浮かんでいるのを見かけるだけ。小さい池には真鯉が棲んでいる。いつもは静かなのだが、今回はバシャバシャと騒がしい音がする。その方に目をやると河骨の花が咲いていて鯉どもが蠢いている。産卵の時期と分った。


     貌洗ふ蟻のしぐさや子が真似る
     大き蟻小さき蟻も忙しく
     マンネリの眠気を覚ます雉の声
     河骨の水面揺るがせ鯉産卵
     古民家や大き目玉の鯉幟


  人嫌ひのわが性知るや近づけどまばたくのみに鴉は逃げず
  つひさつき遇ひし鴉を思ほえばわが行く後を追ひかけてくる
  藤棚の花は端から垂れにけり中ほどはまだ房の幼き
  葉桜に青きヨーヨー垂れさがる高き梢に鶯のこゑ
  巣作りの材となすらしムクドリが草の青根を嘴に切る
  河骨の花咲くところ鯉どもの背のあらはなる産卵射精
  橋の上に若き女が屈みこみじつと見つむる生殖の池