天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

秩父の狼信仰(2)

皆野町椋神社にて

 前衛俳句の推進者・金子兜太の故郷である埼玉県秩父郡皆野町に行ってきた。兜太は、「おおかみ」への思い入れが強く、句集『東国抄』に狼の連作二十句がある。内の十句を次にあげる。


     おおかみが蚕飼の村を歩いていた
     おおかみに螢が一つ付いていた
     おおかみを龍神と呼ぶ山の民
     龍神の走れば露の玉走る
     狼に転がり堕ちた岩の音
     狼生く無時間を生きて咆哮
     山鳴りときに狼そのものであった
     狼の往き来檀の木のあたり
     狼墜つ落花速度は測り知れぬ
     狼や緑泥片岩に亡骸


二番目の句は最もよく知られていよう。皆野町椋神社の境内に大きな句碑になっている。右上の画像である。


     おほかみの句碑を暗めて八重桜
     春雨に狼が啼く武甲山
     おほかみに霧立ち込むる奥秩父
     大神に竹の子ごはん奉る


なお、狼を詠んだ歌は万葉集に「大口の真神」として出てくるが、このブログの2012年2月21日の項でご紹介した。