天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

紫陽花の歌(1)

鎌倉・長谷にて

 今までにもこのブログで紫陽花の歌をいくつかご紹介したが、これから4回に渡って重複しない作品をまとめて取り上げてみよう。
 紫陽花の原産地は日本なのである。ヨーロッパで品種改良されたものはセイヨウアジサイ と呼ばれる。アジサイの語源には、三、四説くらいあるようだが、はっきりしない。『万葉集』では「味狭藍」「安治佐為」、平安時代の辞典『和名類聚抄』には「阿豆佐為」の字をあてている。 現在、漢字表記に用いられている「紫陽花」は、唐の詩人白居易が別の花(ライラック?)に付けた名で、平安時代に源順が誤ってこの漢字をあてたことから広まったという。


  いくたびか稲妻は消え紫陽花のいろ濃きはながいなづま
  を待つ                初井しぐ枝


  戸口戸口あぢさゐ満てりふさふさと貧の序列を陽に消さむため
                      浜田 到
  天も地もか黒となして雨の降りあぢさゐの花水際に咲く
                      都筑省吾
  萼あぢさゐのむらさきの渦ひろがれば月光の中の湖(うみ)
  顕たしむる              生方たつゑ


  あぢさゐのかがやく花鉢透明な時間のなかで溶けてゆくなり
                      疋田和男
  無念なるわが青春をゑがかむに骨のやうなる冬のあぢさゐ
                      玉井慶子