天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

紫陽花の歌(3)

鎌倉長谷寺にて

 日本全国に紫陽花の観光名所がある。寺院の場合には、アジサイ寺という別称がついている。わが散策定番の鎌倉では、明月院成就院長谷寺などがそうである。神奈川県に広げれば、箱根登山鉄道南足柄市開成町 などいくつもある。


  白あぢさゐ雨にほのかに明るみて時間(とき)の流れの
  小さき淵見ゆ           栗木京子


  空のやうなる水のやうなる花むらに埋れて歩むあぢさゐ
  の寺               塚越信子


  抜きすてしままのあぢさゐ月明に藍まだ褪せぬ花首もたぐ
                  富小路禎子
  混沌をそこに象るごとくして藍の紫陽花うつむきて咲く
                  大野とくよ
  どの家も紫陽花ばかり生き生きと貧しき軒を突上げて咲く
                  長谷川愛
  夜の玻璃に室内のわれ写りおり寝ており庭の紫陽花の上
                   冬道麻子


(注)右上の画像は、長谷寺でこの時期、観光客に配られる団扇で、
  「あじさいの風」と書かれている。以下は、成就院長谷寺
   光則寺とめぐった折の作品。


     紫陽花のなだるる先に由比ヶ浜
     あじさいの風」まんまるの団扇かな
     もののふのやぐらの前の七変化
     紫陽花や孔雀の声に驚きぬ
     江ノ電に触れむばかりの四葩かな


  長谷寺の斜面に咲ける紫陽花を列なし愛づる人のあはれさ