天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

和歌に詠まれた滝

布引の滝

 このブログで既に何回か滝の俳句や短歌を取りあげたが、古典和歌に詠まれた作品はまだなので、今回はそれをご紹介する。ちなみに万葉集には、垂水(たるみ)三首を入れて33首に詠まれている。


  幾多(いくばく)も降らぬ雨ゆゑわが背子が御名(みな)の
  幾許(ここだく)滝もとどろに   万葉集・作者未詳


  神の如(ごと)聞ゆる滝の白波の面(おも)知る君が見えぬ
  このころ            万葉集・作者未詳


  石走(いはばし)る滝もとどろに鳴く蝉の声をし聞けば都し
  思ほゆ             万葉集・大石蓑麿


  こき散らす 滝の白玉 拾ひおきて 世の憂き時の涙にぞかる
                  古今集在原行平
  落ちたぎつ滝のみなかみ年積り老いにけらしな黒きすぢなし
                  古今集壬生忠岑
  おもひせく心のうちの滝なれやおつとは見れど音のきこえぬ
                   古今集三条町
  今さらに我は帰らじ滝見つつよべど聞かずと問はばこたへよ
                    後撰集・遍照
  吹きむすぶ滝は氷にとぢはてて松にぞ風のこゑも惜しまぬ
                新勅撰集・式子内親王


 日本の滝の名所としては、華厳の滝那智の滝、布引の滝が日本三大神滝とされているが、歌枕として和歌によく詠まれたのは、「布引の滝」である。上の在原行平の歌が一例。この滝は神戸市生田川の布引渓流にある。右上の画像がそれである(神戸市観光サイトのものを引用)。http://www.feel-kobe.jp/sightseeing/spot/?sid=153