天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

神奈川の力石9

横浜市鶴見区の日枝神社にて

 力石の所在地にたどりつくのに毎回のように苦労する。川崎大師のようによく知られた場所なら問題ないが、多くは昔の村の天神社や地蔵堂などであり、地図だけが頼りになる。今回は境木地蔵堂にたどりつくのにとんでもなく路を間違えた。後で顧みれば、バス路線から探す方が正確とわかるのだが。


[青少年広場]鎌倉市岩瀬
     湧水に汗流しけむ力石
     河岸に雲湧くごとく百日紅
  青少年広場の隅に石ふたつ固定されたり草いきれする
  ただ独りサッカーボール蹴つてゐる広場の隅に力石二個
  上総掘り湧水井戸の水を汲む芝生はづれに二個力石
  立札の下に動かぬ力石犬の散歩に広場をめぐる


日枝神社横浜市鶴見区矢向
     蝉しぐれ誰が持ち上げし白虎石
     天神の祭りなつかし力石
  それぞれに文字刻まれし石六つ中に「白虎石」「龍虎石」あり
  大津より勧請せしとふ天神の庭に鎮まる力石六つ
  「白虎石」「龍虎石」とふ名もありて力競ひし昔しのばゆ


若宮八幡宮小田原市堀之内
     大いなるケヤキ、ムクノキ蝉しぐれ
     尊徳の生家小暗き秋灯
  万両の朱実かがやく庭隅の「水神」脇にならぶ三つ石
  若宮の力石見て訪ねけり二宮尊徳誕生の家


[境木地蔵堂横浜市保土ヶ谷区境木本町
     それらしき石の三つ四つ蝉しぐれ
  老人に聞けど知らぬといふ答境木地蔵の力石はや
  力石いづこと探す境内に蝉鳴きやまぬ境木地蔵
  本堂の横の植木の元にあり三つ四つ並ぶそれらしき石


所感:
     初秋のわが歌枕力石
  さねさし相模の国の村々の力石訪ふわが歌枕
  間違へたと思ふ地点で引き返せ今日わが得たる教訓なりき
  地図を見て力石まで歩くこと判断力の鍛錬として