天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

空蝉(うつせみ)

横浜市俣野別邸庭園にて

 蝉のぬけがら。魂がぬけた虚脱状態の身。以下には、蝉のぬけがらを詠んだ歌のみをあげる。古来、万葉集古今集などにも詠まれているが、すでに2009年9月16日、2010年9月2日、2011年9月12日のブログでご紹介済み。重複のない歌をあげる。


     空蝉のからくれないに砕けたり   橋 輭石
     空蝉の一太刀浴びし背中かな   野見山朱鳥


  空蝉のぬけがらひとつ枝に揺れ 生はしがみつくこと
  かもしれず              林田昌生


  憂ひなき老と見えんか蝉がらを手ぐさに丘を降りゆくとき
                     長澤一作
  空蝉の長き眠りの夢のあと風に吹かれてぐみの木にあり
                     大音千紘
  ぬけがらもなきがらもある森のなか時間(とき)止まらせて
  あぶらぜみ啼く            木畑紀子


  暑き午後蝉の抜けがら二つありいのち存ふかなしみもある
                     大和類子