鮓(すし)
飯ずし、押しずし、箱ずし、握りずし、巻きずし、馴れずし、ちらしずし、蒸しずし、稲荷ずし など、わが国には様々の鮓が工夫されてきた。漬け込みずしは、夏の時期が早く熟れる。早鮓は、別名一夜鮓とも言い、速成で作ったもの。地方には名物のよく知られた鮓がある。大津の鮒鮨、吉野の鮎釣瓶鮨、加賀の蕪鮨など。鮨は夏の季語である。
鮨喰うて道を急がずなりにけり 石原八束
母の膝に鮨の飯粒こぼるるを拾ふのも吾がのちのよすがぞ
鹿児島寿蔵
狩勝を下りて久しき国の原山女鮓うる駅にとまりぬ
土屋文明
にぎり鮨われに食はしめうひうひし月照る舗道にみちびき
ゆきて 坪野哲久
ちひさな胸びれをつけし鮓を食ふからすさわげる風の日
に食ふ 葛原妙子
癩の村びとに早鮓つくりて祝はるる二人を目守(まも)り
夜明疲れし 伊藤 保
干瓢の稲荷の寿司に巻きたるを噛み切れぬごとき悲哀ぞ
来たる 柳 宣宏
泣きながら鮨喰ふ顔を見られをり心尽して庇はれまいぞ
大口玲子