天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

窓(2)

登呂遺跡にて

 日本の竪穴式住居では、採光用と排煙用の開口部があった。これには庇が設けられ、雨が吹き込まないようになっていた。日本家屋の技術が発達すると、障子のような紙を使った採光用の窓が利用されるようになる。


  うつせみのわが息息(そくそく)を見むものは窗(まど)に
  のぼれる蟷螂(かまきり)ひとつ       斎藤茂吉


  よき月と
  賞めて通れる人のあり、
  よき月夜かと窓を見上ぐる         渡辺順三


  遠く来てひとりめざむる朝はよし千島に向ふ窓あけはなつ
                       橋本徳寿
  劇薬をはかりし秤(はかり)と硝子器と華麗なり八月の窓に
  見しもの                真鍋美恵子


  紫陽花のむらがる窓に重なりて大き地球儀の球は冷えゐつ
                       葛原妙子