稲妻(3)
雷という時は、対地放電にせよ雲間放電にせよその音と光の放電現象全体を意味するが、稲妻は、光の部分に注目した言葉である。雷検知器には、光音検出型と電磁波検出型とがある。前者は見える範囲、聞える範囲に限界がある。後者は、稲妻から放出される電磁波に特徴があることが分り(「ユーマン理論」)、落雷時に放出される電磁波のみを検出することが可能となった。
カナリヤの雛はとまり木に身をよする今宵しきりに光る
稲妻 近藤芳美
極光か雲に常なき稲妻かウラルを越えてすでにあかとき
近藤芳美
ひっそりと地平にふるふいなびかり今なまなまし唇ひとつ
前登志夫
稲妻は針葉樹林にひらめきてよすがらわれを刺青(いれずみ)
なせり 前登志夫
音のなき稲光われの手を切り足を切り薄き耳を切り
前登志夫
身籠れる妻をも照らす稲光蹠(あなうら)しろくながなが
と臥す 千代国一
稲妻は遠く光りてはるかなる家郷に似つつ夜の町泛かぶ
安永蕗子
稲妻がたまゆら発く薔薇の垣・とりかぶと・人の秘す棘と毒
富小路禎子