周知のように月蝕は、地球が太陽と月の間に入り、満月が欠けて見える現象。食尽の月は、欠け方が最大限に達した状態を指す。皆既月食が典型。
しびれ蔦河に流して鰐を狩る女らの上に月食の月
前田 透
さそりが月を齧じると云いきチモールの月食は暗き
千夜の彼方 前田 透
空の道ゆきて地球のかげにあふ生くるものなき月しろ
にして 上田三四二
月蝕をみたりと思ふ みごもれる農婦つぶらなる葡萄
を摘むに 葛原妙子
悲しみの姿勢のままにわが見たる食尽の月の銅色の影
山中智恵子
朝三人の月より戻る人迎ふ夕べに蝕の月細く出づ
下村百合江