天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

月蝕(1)

NHKテレビの画面から

 周知のように月蝕は、地球が太陽と月の間に入り、満月が欠けて見える現象。食尽の月は、欠け方が最大限に達した状態を指す。皆既月食が典型。


  しびれ蔦河に流して鰐を狩る女らの上に月食の月
                     前田 透
  さそりが月を齧じると云いきチモールの月食は暗き
  千夜の彼方              前田 透


  空の道ゆきて地球のかげにあふ生くるものなき月しろ
  にして               上田三四二


  月蝕をみたりと思ふ みごもれる農婦つぶらなる葡萄
  を摘むに               葛原妙子


  悲しみの姿勢のままにわが見たる食尽の月の銅色の影
                    山中智恵子
  朝三人の月より戻る人迎ふ夕べに蝕の月細く出づ
                    下村百合江