蟹(4)
越前蟹の漁期とあって、テレビのニュースで蟹づくしの料理などが話題になる。このブログでは今まで3回ほどとり上げてきたので、この際、一気に残りの短歌をとりあげておく。
蟹の種類は驚くほど多い。細かく分類すると、世界で5000種以上もいる。日本の海域に棲んでいるカニだけでも1000種以上という。
白砂に穴掘る小蟹ささ走り千鳥も走り秋の風吹く
若山牧水
しぐれ降る暗き海よりあげられてひかりを放つ青き蟹見つ
前川佐美雄
海底に嵐の気ありさわさわとみどりの爪をもつ蟹のむれ
葛原妙子
歩みつつ渚の砂にまぎれ散る小蟹を掬ういのち透くものを
近藤芳美
かすかなる冬の愁いはふるさとの泥の干潟に日を拝む蟹
岡部桂一郎
蟹味噌を吸ひて汚しし唇にものいふことは宥したまはな
川島喜代詩
もがるべき脚をそろえている蟹に隣りて卓の白き女の手
佐佐木幸綱
髪撫でるいやな男の指五本やがてほきほきわれは蟹折る
松平盟子