天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

人形(1)

辻村寿三郎の作品から

 人間の姿に似せて作られたものが人形で、古く先史時代からあった。用途には、祭礼、おもちゃ、鳥獣除け、人形劇 など。最近の人形には電子技術を組み込んで、動いたりしゃべったりするものもある。


  「みんなお病気よ」と人形をねかせつつ子はあそべり半歳
  (はんとし)ごしのわが病(やまひ)いえず  五島美代子


  人形といふものは何老いてなほ其の何たるかまだ見えてこぬ
                      鹿児島寿蔵
  陶(すゑ)の人形(ひとがた)つくらむと土の冷たきを掌にとりて
  思ふ原始の生活(たつき)         鹿児島寿蔵


  台詞(せりふ)よりやや遅れつつ人形(ギニヨール)の手はうごき
  たり泣かむとぞして            大西民子


  からくりの人形は箱にしまはれて人形もわれもくらやみのなか
                       大西民子
  幼な子もいつか起き出でて休日の床(とこ)にのこれるわれと人形
                       吉野昌夫
  職さがしに疲れてデパートの窓に見る人形のやさしき胸のふくらみ
                       水野昌雄