天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鯨(続)

BSテレビ「グレートネイチャ」か

 2012年2月23日の続きである。わが国の捕鯨は古く、クジラを「勇魚」と呼び、万葉集には「勇魚取り」が枕詞として海、浜、灘にかけて使われた。江戸時代から紀州の太地浦、肥前生月島、土佐など沿岸で盛んであった。多くの勢子舟で鯨を網に追い込み、手銛で刺し殺し海岸で解体した。


  昨日こそ船出はせしか鯨魚取り比治奇の灘を今日
  見つるかも         万葉集・作者不詳


  菊枯れて日本海に雪降るをさらし鯨の酢のさびしけれ
                   馬場あき子
  うつせみの命を惜しむひたひたの血にひたりたる鯨
  の刺身              佐佐木幸綱


  ちぬの浦いさな寄るなるをちかたはひねもす霞む海
  恋しけれ             与謝野晶子


  息ながき鯨の愛語聴きながら眠りの来るを待てる夜夜
                    田村広志
  はかなくて次の言葉を探るとき 赤道直下の鯨を思え
                   中川佐和子
  鯨啼くみどりの海のやさしさにぼんやりとして目を
  閉ぢてゐる             大辻隆弘