鰰(1)
「はたはた」の漢字表記。その他に鱩、雷魚、燭魚などの字をあてることも。名称の「ハタハタ」は古語で雷の擬声語。現代なら「ゴロゴロ」だが。雷の鳴る11月ごろに獲れるので、名称に反映している。ハタハタ科の海水魚で、大きな口をもち、鱗がない。産卵期以外は北日本のやや深海の砂泥底に棲む。秋田・山形の名産だが、山陰地方でも獲れる。産卵では死亡せず数年間にわたり繁殖をする。
魚市の中にし来れば雷魚(はたはた)はうづたかくしてあま
のもろごゑ 斎藤茂吉
はたはたの重量はかるあま少女或るをりをりに笑みかたまけぬ
斎藤茂吉
雷魚を漁(と)ると沖べに群れてゐる舟はちひさし日本海に
川田 順
鰰のはららごの 口に吸ひあまる腥さにも したしまむとす
釈 迢空
鰰を吊り干す軒に夕しばし潮の照りの寒くかがやく
木俣 修
鰰のはじけし身をば積みあげて秋田の朝の市に雪落つ
石本隆一