盆(1)
日本古来の祖霊信仰と仏教が融合した行事。仏教用語の「盂蘭盆」の省略形である。七月十五日か八月十五日にあたる。お盆休みとして、十三日から十六日の四日間をとる習わしである。
俳句の季語は、盂蘭盆会であり、傍題に、盆、新盆、精霊祭、霊棚、瓜の牛、茄子の馬など多数あり。
数ならぬ身となおもひそ玉祭り 芭蕉
立ちかこむ杉真青に盂蘭盆会 水原秋櫻子
独り出て道眺めゐる盆の父 伊藤通明
松の木に松の実青く精霊会 長谷川 櫂
わたつ海に親をおしいれてこのぬしの盆するみるぞ
哀なりける 道命
山にありわが盂蘭盆のさびしさも既に見知れるみそ萩の花
与謝野晶子
ふるさとの盆も今夜(こよひ)はすみぬらむはれ様々に
人は過ぎにし 土屋文明
御仏(みほとけ)にたてまつらくは新しき茄子胡瓜豆に
白(しら)はすの花 松村英一
年々の盆棚かざり妻がして子のなき歎き吾がするものか
松村英一
わが母もいでませ今年初盆の化粧薄らにはや来ませ母
加藤克巳
盂蘭盆に来て山寺に鐘をつく心幼くなれるひととき
武川忠一