天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

秋出水(あきでみず)

NHKテレビのニュース映像から

 今年も台風がきて集中豪雨や洪水に見舞われている。山の麓の川では、急流と氾濫が起きる。
 俳句では、単に出水といえば五月雨の頃の洪水で、夏の季語になっている。特に秋の洪水が多いことから、秋出水の季語もできた。


     くちなはも流れ着くなり秋出水    中村苑子
     秋出水蛇居て去らぬ竈口       萩原麦草
     秋出水つばさ重たき鴉かな      永方裕子
     光つつ仏壇沈む秋出水        東條素香


  水やなほ増すやいなやと軒の戸に目印(めじるし)しつつ
  胸安からず               伊藤左千夫


  物皆の動きを閉ぢし水の夜やいや寒寒(さむざむ)に秋の
  虫鳴く                 伊藤左千夫


  秋出水しづかにつよくぶちあたる角すぎてよりひとりの
  おもい                  玉井清弘