道のうた(1)
辞書によれば、道が意味するものには、(1)人、獣、車などが往来する所、道路。 (2)距離、道のり。 (3)途中。 (4)人の行うべき義理、道徳。 (5)手段、方法。 (6)教え、教義。 (7)方面。 (8)すじ道、条理。などがある。
後(おく)れ居て恋ひつつあらずは追ひ及(し)かむ道の
阿廻(くまみ)に標結(しめゆ)へわが背(せ)
万葉集・但馬皇女
橘の陰履(ふ)む路の八街(やちまた)に物をそ思ふ妹に
逢はずて 万葉集・三方沙弥
世のなかの遊びの道にすずしくは酔泣(ゑひなき)するに
あるべかるらし 万葉集・大伴旅人
春の苑紅にほふ桃の花下(した)照(で)る道に出で立つ
少女(をとめ) 万葉集・大伴家持
うつせみは数なき身なり山川の清(さや)けき見つつ道
を尋ねな 万葉集・大伴家持
焼津辺(やきつべ)にわが行きしかば駿河なる阿倍の市道(いちぢ)
に会ひし子らはも 万葉集・春日 老
信濃路は今の墾道刈株(はりみちかりばね)に足踏ましむな
沓(くつ)はけわが背 万葉集・作者未詳
上野乎度(かみつけのをど)の多杼里(たどり)が川路(かはぢ)
にも子らは会はなも一人のみして
万葉集・作者未詳
汝背(なせ)の子や等里(とり)の丘路(をかぢ)し中だをれ
吾(あ)を音(ね)し泣くよ息(いく)づくまでに
万葉集・作者未詳
春の日に張れる柳を取り持ちて見れば都の大路(おほぢ)し
思ほゆ 万葉集・作者未詳