天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

道のうた(5)

けもの道

 山野において獣が通る道のことを「けもの道」と呼ぶ。山野を往き来する哺乳類にも、生活上の道があるのである。森林などでは、人間が開拓した林道と重なる場所もある。熊、猪、鹿などを狩る猟師や猟犬は、けもの道をよく知っている。


  放心してわが佇(た)ちつくす冬野路(じ)に目的不明の
  杭一つたてり          岡部桂一郎


  けものみちひそかき折れる山の上(へ)にそこよりゆけぬ
  場所を知りたり         前 登志夫


  山道に人形(ひとがた)ひとつありしこと言はざりし日の
  昔おもほゆ           前 登志夫


  天川は乳の道(ミルキーウエイ)、母の手にすがりてゆきき
  川沿ひの道           前 登志夫


  群れなしてけものの渉る径ありしかの鹿越もダムに沈みぬ
                   松田一夫
  背負ひ切れぬものは捨てよと木の根道羅漢無言の口ひらくなり
                   青井 史
  匂ひなき黄落のみちを匂ひなき老骨のひとり音もなく去る
                   木俣 修
  けものみちたどれば光る水ありて小動物の赤き舌視ゆ
                   畑 和子


[注]右上の画像は、次のwebから借用。
  httpamatuchi.jpsystemwp-contentuploads201403HHB_3350-800x532.jpg