道のうた(5)
山野において獣が通る道のことを「けもの道」と呼ぶ。山野を往き来する哺乳類にも、生活上の道があるのである。森林などでは、人間が開拓した林道と重なる場所もある。熊、猪、鹿などを狩る猟師や猟犬は、けもの道をよく知っている。
放心してわが佇(た)ちつくす冬野路(じ)に目的不明の
杭一つたてり 岡部桂一郎
けものみちひそかき折れる山の上(へ)にそこよりゆけぬ
場所を知りたり 前 登志夫
山道に人形(ひとがた)ひとつありしこと言はざりし日の
昔おもほゆ 前 登志夫
天川は乳の道(ミルキーウエイ)、母の手にすがりてゆきき
川沿ひの道 前 登志夫
群れなしてけものの渉る径ありしかの鹿越もダムに沈みぬ
松田一夫
背負ひ切れぬものは捨てよと木の根道羅漢無言の口ひらくなり
青井 史
匂ひなき黄落のみちを匂ひなき老骨のひとり音もなく去る
木俣 修
けものみちたどれば光る水ありて小動物の赤き舌視ゆ
畑 和子
[注]右上の画像は、次のwebから借用。
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