深みゆく秋(1)
このところ急に寒くなって都市部でも紅葉が始まった。しかし世界野球「プレミア12」などのテレビ番組に入れ込んで遠出はしていない。近所の俣野別邸庭園とか腰越の漁港や龍口寺、また里山の舞岡公園を散歩するくらいで生活は変り映えしない。
風に揺るる芒のかなた相模湾
釣舟の入港知らす秋の鳶
秋風や延寿の鐘にしたひ寄る
秋風に絵画教室龍口寺
老い先をいかに生きるか鵙のこゑ
球場のネットにあまた枯葉付く
固き実を包みて点る真綿かな
富士を隠しふたつ生まるる雲の嶺
庭隅の落葉けちらす雀かな
畦道に豆腐案山子もならびたり
古民家や絵を描くそばに落葉掻く
箒目のあつまるところ朴落葉
子供らが案山子を笑ふ刈田かな
波待ちのサーファたちが背を向ける砂浜のごみをひろひゆく人
烏賊、鮃、鰺など干せる店先は腰越通り江ノ電がくる
近きものは強く遠きは弱く描け絵の手ほどきに秋風を聞く
この先に為したきことのおぼつかな何事もなき健康診断
木枯しにさくらの枯葉とびちりて球場ネットにあまた貼りつく
大杉の木立をもるる朝の陽に大社造りは神さびて立つ
古民家の庭にならびて絵を描く秋の朝日の老人のむれ
子供らがはしやぎ笑ふ畦道にならびて立てる化け物案山子