天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

羊歯(しだ)

藤沢・新林公園にて

 シダ植物シダ類。シダ植物はデボン紀初期に出現した。石炭紀にもっとも栄え、石灰の起源ともなった。人類による環境破壊の地球を再び再生するには、この羊歯類の力を借りることになろう。花も種子もなく増殖するので(実は胞子による繁殖),ヨーロッパでは古くから魔法の草とされた。常緑で茂ることから繁栄と長寿を願う正月の飾り物に使われる。


     名こそかはれ江戸の裏白京の歯朶      正岡子規
     歯朶勝の三方置くや草の庵         高浜虚子
     やまびとや採りもつ歯朶も一とたばね    飯田蛇笏
     お供へに歯朶のみどりのほの匂ふ     高橋淡路女


  山ゆけば照りつつ涼し青羊歯の淡き胞子も夏ならむとす
                         北原白秋
  土佐の羊歯信濃の羊歯のひとときに萌えたる庭を見らくしたのし
                         木俣 修
  昼過ぎてまばゆく思ふ日の影は青羊歯の葉に透きとほりをり
                        佐藤佐太郎
  わが手足意志うしなひてねむる夜を羊歯は螺旋をほどきていきぬ
                         斉藤 史
  かすかなる風にも揺らぐ羊歯の青ひとは眼を閉ぢて生まるる
                         三井ゆき