天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

酒の歌(1)

大吟醸セット(わが身辺から)

 2010年9月20日のブログ「酒を詠む」では、洋酒も含めた酒一般をとり上げた。また2011年7月29日と2013年6月4日には「冷酒」の作品を見た。以下では、それらを除いて、日本酒(清酒)に限って見ていきたい。
 酒はうるち米を水でといてふかし、麹とまぜ、水を入れて寝かして作る。「待酒」は待人の接待のために用意した酒のこと。「豊御酒」は、酒をほめていう言葉で、美酒、よい酒の意味。「にひしぼり」は、今年収穫した新稲を醸造したできたての酒。


  古(いにしえ)の七の賢(さか)しき人どもも欲(ほ)りせし
  ものは酒にしあるらし      万葉集大伴旅人


  君がため醸(か)みし待(まち)酒(ざけ)安の野にひとりや
  飲まむ友なしにして       万葉集大伴旅人


  焼太刀(やきたち)の稜(かど)打ち放ちますらをの祷(ほ)く
  豊御酒(とよみき)にわれ酔(ゑ)ひにけり
                   万葉集湯原王


  にほどりの葛飾早稲のにひしぼりくみつつをれば月かたぶきぬ
                      加茂真淵
  落栗をすびつに焼きてにひしぼり飲みつつをれば月も出にけり
                      井上文雄
  ひとりして我がくむ酒にかぎりなき春の心はこもりける哉
                      熊谷直好
  気のふれし落語家(はなしか)ひとりありにけり命死ぬまで
  酒飲みにけり              吉井 勇


  見てあればかごのこほろぎ、見てあれば杯の酒、やはり寂しき
                      内藤�濬作