天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

酒の歌(4)

奈良の正暦寺

 清酒は、米と米麴とで醸造したもろみを濾して得た澄んだ酒のこと。古代の酒はすべて濁り酒であったが、それを澄んだ清酒にする技術は、菩提泉に代表される平安時代以降の僧坊酒に結集されていく。よって菩提泉をもって日本最初の清酒とする説があり、それを醸造した奈良の正暦寺には「日本清酒発祥之地」の碑が建っている。


  夜来の灯けさず新しき年待つとあへていそがず酒を
  あたたむ             鹿児島寿蔵


  喉深く熱酣の酒落しつつ腹に沁みゆくまでのしばらく
                   佐佐木幸綱
  徳利(とつくり)の向こうは夜霧、大いなる闇よしとして
  秋の酒酌む            佐佐木幸綱


  ゆく秋の夜を澄むほどに酒のめば生(よ)に限りあること
  も遙けし             佐佐木幸綱


  どんぶりに酒を注げば若き日の紫陽花の花溢れ出ずるも
                   佐佐木幸綱
  うちなびく春の座敷に酒飲めばゆらりと人のからだはかしぐ
                   佐佐木幸綱
  おしい酒おおーい酒と呼びながら眠る寂しさ演技してみよ
                   佐佐木幸綱
  人肌の燗とはだれの人肌か こころに立たす一人あるべし
                   佐佐木幸綱