ボラ科の魚で鰡とも書く。稚魚は汽水域や淡水域で成長し、秋海にくだる。成長につれて名前が、オボコ、イナ、ボラ、トドなどと変る。水面上に跳ね上がる情景をよく見かける。釣りの対象にされ、冬が美味しい。卵巣を塩漬にして、からすみを作る。季語としては、秋。
鯔を釣り周の天下を待ちにけり 有馬朗人
鯔とんで二上山をいづくとも 前田普羅
鯔群るる音の波立ち走るなり 山上樹実雄
内浦の波のやさしさ鰡櫓 滝沢伊代次
渚辺を歩みてくればまのあたり鯔の跳ねゐる昼海和ぎて
黒田淑子
わが町の川に鯔の子上り来てひしめけり春そこまで来たる
藤井 治
川と川交わるところボラの群れ遊び争い海へゆく午後
天辰芳徳