天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大雄山の紅葉

大雄山最乗寺にて

 今年は紅葉を見損ねた思いをしている。例年、大山寺とか鎌倉の紅葉谷を訪れて満足するのだが、今年はいずれも逃している。駄目もとで小田原経由大雄山(最乗寺)に行ってみた。参道沿いの森は大杉の木立であり、紅葉する樹木は極めて少ない。隣の「丸太の森」にゆくべきだったかもしれない。しかし樹齢数百年の大杉木立の息吹は、なんとも清々しく都会の喧騒を忘れるにはちょうどよい。
 坐禅石(開山の了庵慧明が坐禅した場所)の横の相生橋を渡って参道を行くと紅葉が現れた。特に、瑠璃門に向かう宝物殿横の紅葉はみごとであった。開山堂の前を通って結界門を入り、和合下駄の庭を過ぎて、奥の院に上る石段にきて、大銀杏の黄葉に出逢えた。今回はこれで満足した。奥の院からは、慧春堂側の参道を下って瑠璃門に戻ってきた。


     黒と黄は烏天狗と公孫樹かな
     いてふ散る木立に黒き天狗かな
     ふり仰ぐ紅葉にくらむ眼かな


  両側に大杉の立つ坐禅石みどりの苔に開山を想ふ
  大雄山師走の森にひろひたり赤の凝れるもみぢ一葉
  寄進せし夫婦をおもふ和合下駄観音菩薩の見下ろせる庭
  血の色のもみぢ一葉(ひとは)を読みさしのページに挟む
  『おくのほそ道』


  大杉の木立の間に黄葉のかがやき散らす大き公孫樹は
  大杉の息吹すがしき参道を背筋伸ばしてもみぢ狩ゆく
  うち叩く太鼓に唱ふ念仏を道了尊の参道に聞く
  大杉の小暗き森に日の射せば大き公孫樹は黄葉ちらす


 連句を追加しておく。

     十二月一日妻の誕生日
     下駄饅頭をおみやげに買ふ