人参(2)
夏に種を撒いて秋から冬に収穫する方法が容易である。東洋系ニンジンは、各地で作られるようになった。赤色の金時にんじんが代表的。甘味が強くてニンジン特有の臭みが少なく、煮ても形が崩れにくいので和風の料理に重宝される。西洋系ニンジンは、オランダやフランスで改良がすすみ、江戸時代末期に日本に伝来した。主にオレンジ色をしており、甘味もカロチンも豊富に含んでいる。五寸ニンジンが一般的。
「平凡に生きよ」と母が言ひしこと朱の人参刻めば恋ふる
生方たつゑ
にんじんの種子蒔く子供、絵の中の一粒の種子宙にとどまる
佐佐木幸綱
人参のつぼみのなかのしろき花ほのぼのと子は黙しつづけぬ
坂井修一
ダムの面吹きくる風のつめたかり人参背負ひ山畑下る
下平武治
大根と人参床(ゆか)にころがれり大根は白人参は赤
石田比呂志
にんじんの泥をおとしてにんじんの色があらわる人参色が
沖ななも
花に抜きし人参は湯にうごきつつ降る雨に過ぐる夕べさむけれ
河野愛子
ニンジンを地精と呼ぶは何ゆえか前髪のような緑葉ゆれて
栗本京子