天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鴫立庵の力石

大磯鴫立庵にて

 力石の調査研究で高名な高島先生から、大磯鴫立庵にも力石があることを教えて頂いた。今まで先生の著書『神奈川の力石』を見て、各地を巡っていたのだが、大磯は馴染みの土地であり、うかつにも見過ごしていた。改めて著書の該当箇所を見ると、高来神社の力石と並んで鴫立庵の力石の写真があった。
 年の瀬でもあり、慌てて鴫立庵を訪ねた。受付で力石はどこにあるか聞いたところ分らない、とのこと。庭内の全ての由緒ある石の写真解説を見てもらったのだが。自分で探す事にして円位堂近くの芭蕉句碑まできた時、その並びの石塔横に件の力石があった。「火気厳禁」の札の後ろ、さつきの蔭に置いてあった。高島先生の著書にある「江戸濱町かし通 富之助」の刻字がかすかに見えた。
探し当てたところに、受付の女性が、写真集を携えて「ありました」とやってきた。力石とは何か教えてほしい、とのことなので簡単な説明をしてあげた。鴫立庵からの帰りは、島崎藤村旧居に寄り道した。


     枯葉散るさつきの蔭の力石
     歳晩の朝日さしくる力石
     小春日の力石見る円位堂
     年暮れて探しあてたり力石
     歳晩の波の音聞く円位堂
     戸のひらく藤村旧居花八つ手


  「火気厳禁」の札のうしろの力石枯葉の散れるさつきの下に
  こゆるぎの磯の波音かそかなり円位堂には西行の像
  西行が聞き耳たつる円位堂こゆるぎ浜の波音かそか
  こゆるぎの尽くることなき波音に時のうごきを探る西行
  円位堂なかに座れる西行の目つき鋭き黒き銅像