岩魚
「いわな」と読む。サケ目 サケ科 イワナ属の魚である。肉食性で、水棲昆虫、河畔樹木から落下する虫、その他の水底の小動物などを食べる。寿命は6年程。イワナ属は、世界で30数種あり、多くがスポーツフィッシングの対象魚になっている。紛らわしい淡水魚にヤマメ(山女)がいる。ヤマメもイワナも上流域に生息するが、イワナの方がやや冷水を好む。従って、両者が生息する川では、最上流域をイワナが占有し、その少し下流にヤマメが棲むという。
焼いた岩魚に熱く燗をつけた日本酒を注いだものを骨酒と呼ぶ。俳句では、岩魚も山女も夏の季語。
奥穂高大雨らしや岩魚釣る 板谷芳浄
木曾宿や岩魚いを活かす筧(かけひ)水 鈴鹿野風呂
戸隠の神の炉に焼く岩魚かな 宮下翠舟
それぞれに岩魚は泳ぎ川底の砂に自在な影動きをり
湯浅和男
われはいま梓川清き水底に息づく一尾の岩魚に及かず
北沢郁子
橅林にかはりてふたつめの滝のそれよりうへは岩魚
のみ棲む 山田富士郎
すれちがいざまに岩魚に銜(くわ)えられいかなりけん
泳ぐ蛇の驚愕 佐佐木幸綱
尾頭(をかしら)の皿をはみ出す空揚(からあ)げの岩魚
褒めつつ腹がてこずる 土屋正夫