天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

船の歌(4/10)

洞庭湖の遊覧船(webから借用)

 洞庭湖は、中華人民共和国湖南省北東部にある淡水湖。かつては中国最大の淡水湖であったが、流入する湘江や揚子江などの堆積物によって縮小した。周辺は瀟湘八景の景勝地


  窗に窗むかひ合ひたる大船の一夜どなりのなつかしげなる
                    大隈言道
  ひさかたの天(あめ)の八隅(やすみ)に雲しづみわが居る磯に
  舟かへり来る           伊藤左千夫


  真白帆によき風みてて月の夜を夜すがらこゆる洞庭の湖(うみ)
                   佐佐木信綱
  わが船を真中にすゑて円く円く波に輪をかき狭霧たちのぼる
                    石榑千亦
  韃靼の海阪(うなさか)黒しはろばろと越えゆく汽船(ふね)の
  笛ひびかせぬ            北原白秋


  海(わた)の沖のしらしら明けに海人小船出でゐる中を汽船
  すすみをり             木下利玄


  わが傷をわが手にゑぐるかの日より船は忘却の河を求めき
                    斎藤 史