天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

船の歌(7/10)

釣り船(webから)

 釣舟(いさり船)を詠んだ歌をみてみる。「海人の釣舟」は旅人に好んで詠われ、旅中の侘びしさ、流離の心情を醸し出した。


  飼飯(けひ)の海の庭好くあらし苅薦(こも)の乱れ出づ見ゆ
  海人(あま)の釣舟       万葉集柿本人麻呂


  わたの原八十島(やそしま)かけて漕ぎいでぬと人には告げよ
  海人の釣舟           古今集・小野 篁


  沖なかのえさるときなきつり舟はあまやさきだつ魚(いを)や
  さきだつ        和漢朗詠集・よみ人しらず


  伊良胡崎(いらこざき)に鰹釣舟並び浮きてはがちの波に
  浮かびつつぞ寄る          山家集西行


  秋の夜の月や雄島のあまのはら明け方近き沖の釣舟
                 新古今集藤原家隆
  はまりがたせとの入日の末晴れて空よりかへる沖のつり舟
                      賀茂真淵