天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

船の歌(8/10)

竜骨(webから)

 船の竜骨は、船底の中心を、船首から船尾へ貫く主要部材。船の背骨となるもの。英語ではキールと言うが、その時は、船舶の下に配置された水中構造体をも意味する。


  縹渺と広き支那海を渡りゆく孤(ひとつ)の船は想ふ
  だに寂し               森本治吉


  砂いろに水が喰ひこむ丘ありて記号もつかぬ船置かれゐる
                    生方たつゑ
  帰帆とはつね心打つひたすらに白波立てて帰りくる船
                     高安国世
  エンジンをかけて夜すがら待ちゐたる船も何かをのせて
  発ちたり               大西民子


  竜骨という名なつかしいずれの世に船と呼ばれて海に
  かえらむ               井辻朱美


  眼のくらむまでの炎昼あゆみきて火を放ちたき廃船に遭ふ
                     伊藤一彦