船の竜骨は、船底の中心を、船首から船尾へ貫く主要部材。船の背骨となるもの。英語ではキールと言うが、その時は、船舶の下に配置された水中構造体をも意味する。
縹渺と広き支那海を渡りゆく孤(ひとつ)の船は想ふ
だに寂し 森本治吉
砂いろに水が喰ひこむ丘ありて記号もつかぬ船置かれゐる
生方たつゑ
帰帆とはつね心打つひたすらに白波立てて帰りくる船
高安国世
エンジンをかけて夜すがら待ちゐたる船も何かをのせて
発ちたり 大西民子
竜骨という名なつかしいずれの世に船と呼ばれて海に
かえらむ 井辻朱美
眼のくらむまでの炎昼あゆみきて火を放ちたき廃船に遭ふ
伊藤一彦