駅(7/10)
駅で終電車を待つ身はなんとも寂しい。不安でもある。それに比べると始発電車は、朝の早起きがつらいが、なんか勝ち誇ったような気分になれる。フランソワ・トリュフォー監督の長編映画『終電車』(1980年、フランス)は、ナチス・ドイツ占領下のパリでのレジスタンス運動がテーマであった。ナレーションの中に、「占領区は11時以降、外出禁止で、パリ市民は地下鉄の終電車を逃したら大変だった。」という一節があるが、日本語のタイトルはここからとったのであろう。
いつの日か殺してやらむと思ひしが駅へと肩をならべて
きたる 上田一成
駅頭に出会いてマフラー巻きやればいたく素直にほそき
娘(こ)の頸 久々湊盈子
水掻きのやうなてのひら拡げつつ赤子は駅を背負はれてゆく
前川佐重郎
美しくあらねばむしろ廃市たれ風の乾ける駅を背にせり
春日井建
ここは異界の無人の駅か吹雪く夜のホームにひとり待つ
終電車 山名康郎
いつもより一分早く駅に着く 一分君のこと考える
俵 万智