駅(8/10)
駅は出迎えの場所であり、見送りの場所でもある。よんどころない理由で離婚し、遠く離れて暮らしている夫婦が、何かの機会に逢った。駅まで見送りに行く途中、夫であった人が、離婚時に引き取ったて飼っていた九官鳥が死んだと言った。以下にあげる大西民子の歌は、そうした背景を想像すると、胸のつまる思いがする。ちなみに彼女は、昭和24年から大宮市に住み、埼玉県教育局職員を勤めていた。
連結手よりもどりし駅にそつけなき売り子のありき
いま妻と呼ぶ 御供平佶
「凍え死しろと言ふのか」 その通り 君らが駅にゐる
かぎり遂ふ 御供平佶
駅までのしばしを歩み別れしが九官鳥は死にたりといふ
大西民子
駅舎とはひかり集まるひとところ茄子畑の道駅へと向かう
川本千栄
一段を踏みはずしたる朝の駅群れを追われるガゼルもあらん
松村由利子
駅ごとに名所案内板立ちてときになき駅のあぢさゐの花
中根 誠