天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

一人静(ひとりしずか)

一人静(城山カタクリの里にて)

 センリョウ科の多年草で、丘陵地の林に生える。早春、茎頂から一本の花穂を伸ばして多数の白い小花を開く。長い三本の花糸が白く目立つ。吉野御前、眉掃草などとも呼ばれる。
 同類に二人静がある。茎の上部に葉が二対対生し、十字状をなす。4、5月ごろ、葉の間から花穂を2または3本出し、白い小花を多数つける。さおとめばな、つきねぐさなどとも。



     忘れぬやう一人静にやる水を      川崎展宏
     ふたりしづかひとりしづかよりしづか  川崎展宏


  ひとりしづか白糸の花立てて咲く四月を待たむ妻なしわれは
                     松村英一
  一人静眉をひらける木の下にいまだしめれるきぞの夜の雨
                     土屋文明
  ひとりしづか松の根方に植ゑむかと思ふまで今の心やすけし
                     柴生田稔
  仕事好きと見做さるる身を悔やまねど銀線草(ひとりしづか)の
  花も過ぎゐる             大西民子


  せはしさに在り馴れし身は今日山に一人静の穂を見いでたり
                     伊藤雅子