天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

つぐみ(続)

NHKダーウィンが来た」の映像から

 2012年2月4日のブログの続きである。説明部は繰り返しになるが、ヒタキ科の渡り鳥。秋に大群をなしてシベリヤから日本へ来て、平野部の林や耕地に群棲する。背、足、嘴は暗褐色、腹は白色。翼長は13センチほど。木の実や昆虫を食べる。漢字表記は「鶫」。俳句では秋の季語。


    鶫来るふもとの村の赤子かな  大峯あきら
    砂取り節うたへば応ふ磯鶫    沢木欣一
    鶫罠見て来し兄の口笛か     中尾白雨


  私の体のなかで啼くものがある。鶫だ。外は夜あけだ
                   前田夕暮
  つぐみ鳥山を出入りて啼くこゑす鋤田はすでに水引けるらむ
                   中村憲吉
  鶫嚼むおのが羽音をおのれ聞き年越してゆく命なりけり
                   宮 柊二
  シャルル・ド・ゴール空港に鶫群れ、今日成田曇りて
  雁(がん)うつりゆく        宮 英子


  蒼ぞらに冬の木の間にうかびたる鶫の顔ぞ覚(かく)者(しや)
  のごとき             玉城 徹


  地(つち)にして鶫は見をり桃散るはさびしき春のけはひ
  ならずや            馬場あき子


  骸ぬぎ飛翔のみとなりし夜の鶫、燐寸を擦ればその
  〈死〉うごくも          浜田 到


  鋭き聲にあひ呼び岬の空移る鶫か寒き岩礁すぎて
                   竹内邦雄