天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

夕陽のうた(3/10)

福岡県

 吉井勇は、耽美派歌人・劇作家で、読者によっては嫌う向きもあろう。女性遍歴や芸者遊びが反発を買う。
 木下利玄は、明治39年東京帝国大学文科に入学。東大在学中は佐佐木信綱に師事し短歌を学んだ。その後、窪田空穂や島木赤彦らに影響を受け、平易で写実的な歌風は利玄調と呼ばれるようになった。



  けふ一日雪のはれたるしづかさに小さくなりて日が山に入る
                    斎藤茂吉
  赤寺の沙門(しやもん)即非の額にさす夕日はかなし支那人
  (あちや)ひとりゆく         吉井 勇


  遠渚(とほなぎさ)よる波しろく夕日てりこの巌(いは)かげの
  冷えそめしかも           木下利玄


  峰のうへに夕日あまねし幽(かそ)かなる谷のぼり来てこゑを
  挙げつる              中村憲吉


  海の中へ落ちてゆく道に佇つてゐて今日の夕日が赤くて見られぬ
                   前川佐美雄
  轟きし雨は地平に霽れゆきて夕日のなかに雲ぞかがよふ
                    山本友一
  三輪山が夕日に死なん夏の日を額田は生ききうち消しがたく
                   馬場あき子


[注]右上の画像は、「死ぬまでに一度は見るべき!「日本の夕陽百選」に
   選ばれた美しすぎる夕日9選 」から借用した。
    https://retrip.jp/articles/4913/