天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

伊豆・湯ヶ島

狩野川の渓流

 修善寺には今まで何度か来たが、湯ヶ島温泉には泊ったことが無かったので、今回一泊することにして、白壁荘を予約した。この辺りには文豪たちが利用した宿が多いらしい。湯ヶ島井上靖の故郷であるし、湯本館には川端康成が滞在して、『伊豆の踊子』を執筆した。
 ところで伊豆には陸上であるにも関わらず「島」とつく地名があることが気になってその由来を知りたいと思っている。少し調べただけなので推測の域を出ないが、蛭ヶ小島は、狩野川が氾濫してそのあたりだけが島として見えたところから名付けられたのであろう。また「シマ」には島の外に「村」、「田園」、「村落」を指すこともあるので、あるまとまりの地域を差したとも考えられる。ヤクザ映画では、「シマを乗っ取られた」などという。湯ヶ島は、温泉の湧く地域ということであったのではないか。


     渓流の音に目覚むる障子かな
     渓流の音聞く初夏の湯宿かな
     狩野川や鮎解禁の竿ならぶ


  美しき地名をもてる伊豆の国 天城、月ヶ瀬、風早峠
  碑文には『伊豆の踊子天城越えかつての伊豆の旅の
  思ひ出


  渓流の音聞く宿に一夜寝て疲れ落しぬ伊豆の湯ヶ島
  浄蓮の滝よりきたる濃みどりの水の流れを眼下にしたり
  ブビンガ・アフリカ紫檀の巨木風呂樹齢千二百年を
  刳り抜く


  ブビンガ・アフリカ紫檀の巨木風呂赤道直下のガボン
  より来し


  樹齢千二百年の巨木といふ伐りてくり抜き湯船となせり
  湯ヶ島の巨木巨石の露天風呂夫婦わかれて浸りけるかも
  湯ヶ島井上靖の故郷なり鮎、虹鱒や猪も棲む
  狩野川の鮎解禁の日に遇ひて小ぶりの鮎の塩焼きを食ぶ
  湯ヶ島蛭ヶ小島伊豆の国陸上なるに何故か島とは
  狩野川の崖の上なる湯の宿に泊まりて一夜熟睡したり
  囲炉裏にはガラスの板がのせてあり室温保つ部屋のエアコン
  ノーベル賞候補となりて待ちをれどつひにむなしき井上靖
  朝川に鮎釣り人のならびたり橋の上から見てゐる人も