夕陽のうた(4/10)
春日井建さんは、わが短歌初心の頃、産経歌壇でお世話になった歌人である。何度も特選にとってもらい、彼の歌に心酔した時期であった。彼が歌集『未青年』を刊行した時、三島由紀夫が「現代の定家」として高く評価した。以下の「火の剣」の歌は、青春に死の幻影をみる感覚であり、三島由紀夫好みであるが、その後現実に中咽頭癌が発見されて苦しむことになった。二首ともに象徴的。2004年5月22日に逝去。
槻(つき)の木にかかりし夕日がほど経ちて樫の群(むら)
葉(は)になほ没(い)りてゆく 福田栄一
夕かげの色寒くなる窓がらす何見るとなし暫く坐る
植松寿樹
大空と大地相寄るまさかひをとどまらぬ陽の落ちゆく早さ
杉浦翠子
火の剣のごとき夕陽に跳躍の青年一瞬血ぬられて飛ぶ
春日井建
頽るるにまかせられつつ腐敗せぬ石のローマを夕日が晒す
春日井建
灯火なく過ぎし月日をおもほへば落日の壮厳も見ざる久しき
橋本徳寿
萱の穂にのこる日もなし山のまにこもる湖くれしづみたり
藤沢古実
[注]右上の画像は、「生で見たい世界のうつくしい夕焼け10選」から借用した。
http://blog.compathy.net/2015/01/02/sunset_yf/