天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

夕陽のうた(8/10)

鳥取砂丘の夕陽

 山中智恵子の歌にある「たまかぎる」は、枕詞。玉がほのかに輝く意から、「夕」「日」「ほのか」「はろか」「ただ一目」などに、また「磐垣淵 (いはかきふち) 」にもかかる。
 前登志夫の歌にある「歳木(としぎ)」は、新年の燃料として、暮れのうちに用意したたきぎのことであり、また戸口や門松のそばなどに置き、年神に供える木を指す。新年の季語。



  地平の果もわが佇つ丘もさばかるるもののごと鎮み冬の落日
                      木俣 修
  玉蜻(たまかぎる)夕日にむきてこととへば焚(た)きあましたる
  恋もあるべし             山中智恵子


  歳木(としぎ)樵(こ)るわがかたはらにうつくしき女人のごとく
  夕日ありけり             前 登志夫


  この国を攻めんとしたるちちははの無謀をわらう大きな夕日
                      小高 賢
  夕日から長い腕(かいな)の伸びてきてわずかにのこる柿に
  触れたり                小高 賢


  軽井沢の「沢」のあたりにゐし夕日走る「あさま」に追ひ
  越されたり               伝田幸子


  声聞きしことなき雛の唇にささやくごとく夕日届きつ
                    青井 史


[注]右上の画像は、「死ぬまでに一度は見るべき!「日本の夕陽百選」に
   選ばれた美しすぎる夕日9選 」から借用した。
    https://retrip.jp/articles/4913/