天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雨のうた(1)

歌川広重の浮世絵から

 雨(あめ)の語源は、天(あめ)から降る水(みず)なので、「あ」と「み」の組合せ「あみ」から「あめ」と変化したのであろう。漢字の雨は、象形文字。日本ほど雨の種類毎に名前を付けた国は他に無いのではないか。季節に依存した雨だけでも、春雨、菜種梅雨、五月雨、走り梅雨、梅雨、暴れ梅雨、帰り梅雨、緑雨、麦雨、夕立、狐の嫁入り、秋雨、秋時雨、秋入梅、液雨、寒九の雨山茶花梅雨、氷雨、淫雨 等々。高橋順子(文)・佐藤秀明(写真)『雨の名前』という本が参考になる。
 万葉集には、雨を詠んだ歌は100首(長歌含む)ほどある。



  秋萩を散らす長雨(ながめ)の降るころはひとり起き居て
  恋ふる夜ぞ多き          万葉集・作者未詳


  苦しくも降り来る雨か神(みわ)の粼狭野(さの)の渡りに家も
  あらなくに             万葉集・長奥麿


  ひさかたの雨の降る日をただ独り山辺にをればいぶせかりけり
                   万葉集大伴家持
  この見ゆる雲ほびこりてとの曇り雨も降らぬか心足(たら)ひに
                   万葉集大伴家持
  雨は降る仮盧(かりほ)は作るいつの間に阿胡(あご)の潮干に
  玉は拾はむ            万葉集・作者未詳


  このゆふべ降り来る雨は彦星の早漕ぐ船の櫂の散沫(ちり)かも
                   万葉集・作者未詳
  妹(いも)が門(かど)行き過ぎかねつひさかたの雨も降らぬか
  其(そ)を因(よし)にせむ      万葉集・作者未詳


  金門田(かなとだ)を荒掻きま斎(ゆ)み日が照れば雨を待(ま)とのす
  君をと待(ま)とも           万葉集・東歌